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日本書紀に記載されている和同開珎関係の記述を見てみます。708年 銀銭発行 その後銅銭発行709年 銀銭の私鋳を禁じる710年 銀銭の使用を禁じる716年 白鉛の所有を禁じる721年 銀銭、銅銭、銀一両の交換比率を公定
以上の記述からの疑問点709年に銀銭の私鋳を禁じたが、銅銭の私鋳はOKだったのね?710年に銀銭の使用を禁じたが、721年でも銀銭と銅銭を交換比率に従って交換できたのね?つまり、銀銭がまだ流通していたのね?重要ポイント716年の白鉛の所有禁止って、どういうこと?和名抄によれば、白鉛とは、上代において錫のことです。錫は銀白色の金属で、銅との合金は青銅です。この青銅は、錫の割合が増すと、銅色が薄くなり銀白色になります。古代の青銅鏡は、この錫の含有率が高く、然るに鏡のように輝きます。709年銀銭の私鋳を禁じたのは、銀銭もどきの銀白色の青銅銭が大量に密造されたからではないでしょうか?そしてそれはその後も横行したので、原料の錫の所有を禁じる対策までうったのではないでしょうか?745年には、私鋳銭者を鋳銭司で使役させるという奥の手まで導入しています。
今回出品の和同開珎は、まさに錫銀銭もどきの青銅銭だと思います。銀銭は、銀の原価よりも高めの価値が設定されていましたが、これを錫銀銭で鋳造すれば、うま味が何倍も増します。鋳造技術がある豪族たちは、こぞってこの偽銀銭を私鋳したのではないでしょうか?銅銭を私鋳しても手間はかかりますから、あまり利益は出なかったでしょう。ですから、当時の政府は、発行1年足らずで即座に銀銭を廃止したのではないでしょうか?今のように蛍光X線成分分析鑑定はできない時代ですから、一般民衆には銀銭としか思えなかったでしょうね。本銭は、フラッシュのない状態では銀白色です。
以上のことから、本銭は、当時の私鋳銭ではないか?と思われます。しかも、書体はスーパーコピーのように優秀です。私鋳銭とはいえ、歴史的に非常に価値があるものではないでしょうか?
和文字周辺にカケがありますが、錫の含有率が高くなるほど、固くてもろくなるそうです。古墳時代の銅鏡が割られて埋納されていたのも、磨くと銀色の鏡面になる青銅鏡だからです。
同の口が左に寄り、開が隷開本銭のこの特徴は、中字中様ではなく、古和同隷開になります。和の口が欠けていますので、その特徴については判断できません。材質から私鋳銭をとりましたが、真相は謎です。古和同隷開銀銭の私鋳銭という解釈もできます。